16世紀の昔から人々を魅了し続けている、劇作家であり、詩人であるシェイクスピアの「ベニスの商人」は、もっともポピュラーな喜劇の大傑作です。わが国でも明治18年以来、シェイクスピア劇の中で「ハムレット」をしのぐ断然トップの上演回数を誇り、誰にもわかりやすい痛快なプロットで親しまれて来ました。芸優座の公演では、1976年の初演以来、まずは解説者としてピエロが登場しテーマ曲を歌った後、続いてシェイクスピアやその時代についてなど、常識として是非知っておいて頂きたい事をお話します。
テーマはルネッサンス時代に生きた青年たちの愛と友情の謳歌・・・その青年たちに、ユダヤ人の高利貸しシャイロックを対置させ、彼の冷酷、無慈悲を否定し、非人間性に青年たちが打ち勝つバイタリティーを、あくまでも明るく、爆笑の中に主張しています。
総合芸術としての舞台は美しく、音楽はシェイクスピア時代の楽譜や楽器(ビオラダガンバ、バージナル、クルムホル、リコーダー等)を使った古楽となっており、衣装も、当時のデザインで製作し、重厚な雰囲気を楽しんで頂けます。
水の都ベニスの豪商アントーニオは、親友バサーニオから苦しい胸の裡を打ち明けられました。バサーニオは、ベルモントに住む美しいポーシャ姫に恋をしているのですが、彼女の亡き父の遺言より、金・銀・鉛の三つの箱の中に秘められた姫の肖像を、見事に選び当てた者と結婚するよう定められ、連日、各国の王子たちが競ってこの箱選びに訪れているというのです。
ポーシャ姫の意中にあるのも、父の存命中に会っていたこのバサーニオだったのですが、彼の家は貴族とは名ばかり、世界中から訪れる王侯貴族と対等に張り合うだけの金がありません。そこでバサーニオは、アントーニオに3000ダカットを用立てて欲しいと頼みます。しかし、貿易に全財産を投資していたアントーニオの手元には現金がなかったため、やむなく悪名高い高利貸しのシャイロックから、自分の胸の肉1ポンドを担保に金を借りてやり、バサーニオを恋するポーシャ姫の元へ送り出します。
はたして彼は見事ポーシャ姫の肖像を選び当て、二人は結ばれる事になりましたが、一方アントーニオは商船が嵐のため遭難して一隻も戻らず、破産してしまいます。日頃から自分の悪徳ぶりをなじられてアントーニオを恨んでいたシャイロックは、この時とばかり約束通り肉1ポンドを取り立てようと裁判を起こします。
さて、その裁判の日、ポーシャは男装をして恩人アントーニオを救済すべくベニスの法廷へ乗り込み、慈悲の心と巧みな弁舌で冷酷なシャイロックと対決するのですが・・・
<作品情報>
・作/W.シェイクスピア
・演出/平塚仁郎
・上演時間/約105分(休憩なし)
・対象/中学生・高校生・一般
私は最初演劇には興味もなく、早く終わらないかなぁと思っていました。そんな気持ちで観始めましたが、実際見てみると、とても興味を惹かれました。演技をしている人の気持が伝わってきたからだと思います。演劇が終わるころには、最初に持っていた気持ちが変わっていました。演劇がこんなに楽しい物だと知る事が出来て本当に良かったです。ぜひまた見たいと思いました。
R高等学校1年生女子生徒
僕は演劇を見るのは今回が初めてでした。テレビや本などで少し見たことはありましたが、特に興味を持つことは出来ませんでした。しかし、今回の演劇教室で本物の演劇を見たとき僕は、完全にその世界にのみこまれました。魅力的な登場人物、そして、それを生き生きと演じる役者の人々の姿に、「これが演劇なのか」と思い知らされました。今回の演劇教室で僕は本物の演劇の楽しさを知りました。そして、今日感じたことをこれからもずっと忘れないでいきたいと思います。
F高等学校2年生男子生徒
私は歴史に全く興味がなく、シェイクスピアなんて言われても、どうでもいい人が作った劇などどうでもいいと思っていました。しかし、劇が始まってみれば、そのストーリーと迫力に見入ってしまいました。なんということでしょう。あの声・力強さ・表現力、どれをとっても素晴らしいとしか言い様がありません。これからは、機会があったら出来るだけ積極的に劇を見に行こうと思います。それだけ今日は刺激を受けました。
N高等学校3年生男子生徒
この作品では、アントーニオーとバサーニオーの熱い友情がすごいと感じ取れました。自分の命をかけても友達を守るという気持ちがあったからです。ポーシャ姫の結婚のシーンでは「外見はよくても中身は分からない」という、人生の教訓になったので良かったです。
T高等学校1年生男子生徒
友情や法。そして慈悲や愛。楽しく笑って観れた劇だとも思いましたが、その中にとても深いモノがあり、個人で大切なモノはそれぞれ違うけれども本当に必要なモノは何か。信じていくことの大切さ。そんなことを一人ひとり伝えている劇だと思いました。世界でも名作の「ベニスの商人」を観ることができてとても良かったです。また、シェイクスピアの劇に興味をもちました。
K高等学校2年生女子生徒
「肉は取っても良いが血は一滴も流させてはいけない。」いつの時代でも聡明な理論という物は身を助くという事も分かりました。裁判のシーンではユダヤ人の迫害に感じた。一見簡単なストーリーに見えても、背景には宗教の違いがあったりと、とても深くて面白い演劇でした。
T高等学校2年生女子生徒
裁判について改めて考えると、どっちも正しい様な気がして、難しいと思う。それでも、最終的に必ず判決が決まる。その判決に納得する人もいれば、しない人もいる。これもまた難しい事だと思う。けど、すべての人を賛成、反対のどちらか必ず分けるというのは絶対に無理だ。人はそれぞれ感じ方が違うし、対立する事も少なくない。今回は高利貸しの方が負けたけど、あの人の言っていたことも間違ってはいなかったと思う。
S高等学校2年生男子生徒
これだけすごい演劇を作り上げているのはキャスト人だけではない。スタッフもだ。このスタッフたちの力で舞台を支えている事を決して忘れてはいけないだろう。例えれば葉の表面には太陽の光を浴びて輝いている。一方、葉の裏側はどうだろう。決して、表面ほど僕たちの視線を集めない。しかし、裏がないと表は存在しない。ということを改めて思った。
A高等学校2年生男子生徒
劇団の方々はいくつもの旅をして、劇をして私たちを感動させたように、何千もの人を感動させていくのだろう。この仕事はとてもやりがいのある仕事なのだろうと、彼らの劇中の様子を見て分かった。私も将来、劇とは別に他の人にこんな感情をわかせる仕事に就きたいと思った。
K高等学校1年生女子生徒